次世代技術開発

我々は,将来の重力波検出器へむけた先端技術の開発研究も行っています。

KAGRAの感度向上のための、周波数依存性スクィーズド真空場発生装置の開発

KAGRAは、低温で運転される初めての長基線長レーザー干渉計型重力波検出器となる予定です。そのため、その感度は観測帯域のほとんどで量子雑音によって制限されることになります。周波数依存性のあるスクィーズド真空場を注入することによって、量子雑音を低減し、重力波に対する感度を高めることができます。国立天文台では、TAMA300の施設を使って、長さ300mのフィルター共振器を開発しています。スクィーズド真空場発生装置とこの共振器を組み合わせることで、周波数依存性のあるスクィーズド真空状態を作り出すことができます。この研究はヨーロッパの複数のグループと共同で進めています。

レーザー干渉計型重力波検出器のための結晶性コーティングの開発

今日のレーザー干渉計型重力波検出器の感度は、鏡の熱雑音によって制限されています。特に、高反射率を実現するためのコーティング材料は、主な熱雑音源であることが分かっています。国立天文台では、結晶性材料を用いた新しいタイプのコーティングの開発を行っています。結晶性物質は、現在高反射率コーティングで用いられている誘電体物質と比べてずっと低い熱雑音を持っています。この差は、KAGRAの動作温度である低温ではさらに広がります。しかし、大口径の結晶性コーティングを高い光学品質で形成するのはまだ難しく、多くの技術開発が必要です。

低温におけるコーティング熱雑音の直接測定

新しいコーティング技術の性能を熱雑音の観点から評価するため、我々は低温において熱雑音を直接測定可能な装置の開発をすすめています。この装置は、KAGRA向けに開発された低振動クライオスタットの技術を応用し、単結晶シリコンでできた2つの光共振器を利用します。2つの共振器の長さ変動を比較することで、その中から熱雑音の成分のみを取り出すことができます。この測定結果をコーティング作製技術へとフィードバックすることで、より良いコーティングの実現を目指していきます。

光学吸収測定

KAGRAのミラーは、熱雑音低減のため、20Kまで冷却されます。低温における高い熱伝導率と、低い熱雑音のため、サファイヤが鏡材料として用いられます。冷却性能を改善するためには、ミラーにおける光吸収を測定し、最小化する必要があります。国立天文台では、物質表面および内部での吸収特性を測定するための装置が稼働中です。熱光学共通パス干渉計法を用いて、これまでに直径2インチまでの様々なサンプルの光学吸収を測定してきました。現在装置をアップグレード中で、大口径ミラーや、ガリウムヒ素/アルミニウムヒ素からなる結晶性コーティングの測定を行う予定です。

散乱光測定システム

様々な光学素子によって生じる散乱光は、KAGRAのような重力波検出器における雑音源のひとつです。干渉計の感度が上がるにつれ、散乱光の問題は対処が難しくなってきます。従って、散乱特性を測定し、そのプロセスを理解することは高感度の検出器を作るための鍵となります。我々は、球状散乱と後方散乱を測定するための装置をそれぞれ開発しました。これらを用いて、KAGRAで用られるさまざまな物質の散乱特性を測定しています。

top